────『フラグメント』。

同人誌「夢の卵ex」の小説と小説の間にさしはさんで書いた散文。

続き

貴方は知らない。
自分の声が
てのひらが
微笑が
抱擁が
どんな奇跡を起こしたのか────。

空は壊れている
大気は濁っている
川は淀んでいる
そして殆どのひとは罪深い


けれど僕の中に平和と幸福がある
これは何の代償もなく、
貴方が無力な者のために支払ったもの
貴方は知らない
自分がどんな奇跡を行ったのか。



力つきかけた人の中に
今日呼吸するための希望をもたらすこと
物質と関わりのない
平穏な愛の意味を教えたことの意味
他の人の幸福を
自分のそれ以上に願う力を与えたこと
その全ての形容しがたい希有を



もしも今
シュプリーム スーパーコピー神様が僕の右手を取り
忘却の罪によって全てを差し出すよう求めたら
僕は喜んであがなうだろう。
貴方のもたらした愛と
貴方への敬意以外のものは
全て

貴方はおそらく知らない。
奇跡に関与し
その成就に力をふるう
自分の手のあたたかさを