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貴方という事柄・1 【ラジエート】(2004年8月)

04 29 *2009 | Category 二次::幻水2青赤

気ままに眠れることの尊さ。

続き





【ra・di・ate】
・熱・光などが …から 放出する,射出する.  
・…から 放射状に伸びる[発する], 四方に広まる.ラテン語「光を放射する」の意;

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【SIDE:C】

 目を開けると、さっきまで顔に照りつけていた日差しがかげっていた。曇ったか、と思ったが、すぐに、自分の横に座った大柄な男が、影を作ってくれているのが分かった。
 城のすぐ傍の森のこの一角は、カミューにとっては格好の昼寝場所だった。他の騎士の滅多にやって来ない穴場だ。カミューは普段から夜型で朝が弱く、眠りが浅い。常に少し寝不足のせいか、一、二週間に一度、突然昼日中に眠くなるのだ。低位の騎士だった頃はむろん、魔力のようなその眠気をかみ殺して務めに励んでいたが、騎士団長になって、それまでよりも遙かに自由がきくようになってしまった。副団長だった頃、雑務と団長の機嫌取りに追われていたのが嘘のようだった。それで彼は、自分の不謹慎さに一抹の罪悪感と、解放感を感じながら、眠りの虫が疼き始めるとそっと城を抜け出す。そして日照のいい草の中でほんの少しの間眠る。そののち充足した気分で起き上がり、何もなかったような顔で執務室に戻って仕事を続けるのだ。
 カミューの直属の部下である副団長は、一昨年までの彼と同じで、このささやかな午睡を、団長の困った癖として見逃してくれている。だが、具合が悪いことに、彼のこの癖を生真面目一徹の年下の友人に知られてしまった。カミューより一年遅れて青騎士の頂点に立った友人は、寡黙で従順な副団長のようにはゆかなかった。一くさり説教もされたものだ。
 ────少し眠った後は、それまで以上に真面目にやるから勘弁してくれ。
 子供が親にする云い訳のようなことを云って、ようやく放免されたのだ。
 だが、草地で無防備に眠る友人の様子が気になるのか、誰も邪魔しなかった彼の緑の東屋に、マイクロトフは時々やってくるようになった。眠ったふりをして様子を見ていると、声をかけずに様子だけ見て帰ることもあれば、いい加減に起きろ、と揺り起こすこともあった。
 今日はそのどちらでもなく、マイクロトフは、強い日差しからカミューの顔をかばうように隣に座り込み、思いにふけるような顔でぼんやりと木々の葉がそよぐのを見つめていた。
「珍しいな」
 声をかけるとぎくりとしたように肩を揺らす。カミューは起きあがり、思い切り伸びをした。小さく欠伸をする。マイクロトフは少年期からの友人で気の置けない相手だからいいが、部下には見せられない姿だった。座り込もうとすると、何かうなじでひきつれる感触があった。手を回してみると、小さな棘が指を刺した。何か草の実のようなものがついているのだ。引き離そうとするが、髪に絡まってなかなか取れない。
「ああ、ラジアータがついているんだ」
 彼がうなじを手で探って苦心している様子を見たマイクロトフが苦笑した。
「ラジアータ?」
「猫や犬の毛について種子を運んで繁殖する草の実だ。こんなところで眠るからだ───少しじっとしていろ」
 マイクロトフは、彼の身体を囲い込むように腕を回した。青の騎士服に包まれた、長く強い腕がカミューを抱きしめるように巻き付き、向かい合った姿勢のまま、マイクロトフの顔がうなじを覗き込んだ。そして、意外に器用な長い指が、髪についた草の実を取り除くのを、カミューは彼の肩に顔を埋めたままで待つことになった。
「髪が柔らかいから、なかなか取れないな」
 思いの外苦心しているようで、マイクロトフの肩や腕がぎごちなく動く。どうにも妙な姿勢だった。もしもこのまま自分が彼の背中に腕を回したら、抱擁しているようにしか見えないだろう。そう思うと可笑しくなってくる。他の人間が見ないとしても、少なくともマイクロトフはひどく驚くだろう。
 普通、うなじについた草の実を取るなら、前からでなく、後から腕を伸ばすのではないだろうか。その方が様子もよく見えるし、相手の身体に必要以上に接触する必要もない。だが、一心不乱にカミューの髪をいじる友人はそんなことは考えてもいないようだった。
 カミューは鉄の囲いのようなマイクロトフの腕の中で、ある種の明朗な葛藤に悩まされていた。このまま背中を抱きしめたら、マイクロトフは何と云うだろうか。怒るだろうか。笑うだろうか。
 おそらくは狼狽え、次に怒るに違いない。そのマイクロトフの顔を見てみたい誘惑に駆られる。彼の胸元でその誘惑と笑いに耐えていると、やがて腕の動きが止まった。
「取れたか?」
 のんびりとそう尋ねる。マイクロトフの答はない。彼はいぶかしんで顔を上げた。そうしても、日焼けした丈夫な首筋と、騎士服の喉元につけられた真鍮のプレート、光沢のある青い布を押し上げる彼の肩が見えるばかりだ。そのうち肩がぐっとかがみ、マイクロトフが顔を傾けたのが分かった。
 カミューは信じられない気分でその感触を味わった。
 友人が何をしているのか、目では見えなかった。
 だが、項を覆う髪に軽く唇が押し当てられたのが分かった。かすかな息がかかり、唇の柔らかな圧力が、髪を通してうなじに伝わってくる。それは、カミューが頭の中で友人の無防備さへの意趣返しとして想像した抱擁以上に扇情的な、それでいて潔癖な友人の悪戯だった。
「……取れたぞ」
 ほんの一瞬の空白の時間の後、友人は彼の身体に巻き付けていた腕を解き────名残惜しそうなゆっくりした所作だった────、てのひらの上で光る、小さな緑色の草の実を差し出した。気のせいか、マイクロトフの目許にかすかに赤味が差しているように見えた。いつも冷たい黒い瞳がほんの僅か潤んでいる。
「……ありがとう」
 カミューは思いがけない項へのキスを味わう原因になった、その小さな草の実を受け取った。はじけそうな緑色の棘を備えた実。もたらしたものは甘い後味。そっとかすめる項へのくちづけは、友人同士のものというには多少逸脱していた。カミューは驚いてにわかに口がきけなかった。
「もうそろそろ帰った方がいいと思うが?」
 マイクロトフの低い声は、いつもより多少歯切れが悪い。
 カミューは肯いて立ち上がりながら、あの瞬間、彼の背中を抱きしめなかったことを内心後悔することになった。


【SIDE:M】

 あんなことが自分に出来るとは思わなかった。
 眠るカミューの髪に草の実が絡みついていた。うすみどり色の針のような棘のついた実だ。森の下草の中に時々生えている低木のつける実だった。柔らかい毛並みの獣がそれを運び、小さな命を飛散させるのだった。
 カミューがあの森で眠ることを彼は知っていて訪ねる。
 眠りが浅く、すぐに目覚めるくせに、カミューはよく眠る男だった。昼に抜け出して森の中でひっそり眠ってくることを、副団長に聞かされた時は耳を疑った。白騎士のゴルドーなどは、一個小隊を連れ歩いているのではないかと思うほどの人数で周りを守らせなければ、決して外出することはなかった。暗殺を恐れているのだ。
 しかし、ゴルドーが特別なのではなく、歴代の騎士団長はむろん皆そうだった筈だ。二十歳代の半ばで騎士団の長になったカミューとマイクロトフは、あらゆる意味で型破りだった。マイクロトフも、部下をぞろぞろと連れて城下を歩くことは好まない。一兵卒であった時と同じように振舞いたかった。
 だが、誰の目も届かない場所で一人で眠るカミューの癖は度が過ぎる。副団長も頭を痛めているようだった。ひそかに様子を見に行くこともしばしばだと云う。
(「────その役目を時々おれにさせてはくれないか?」)
 そう云うと、副団長のタイロスは、暗鬱に整った顔に困惑したような表情を浮かべた。おそらくカミューには内密に、と云われているのだろう。格上のマイクロトフにカミューの見張りをさせることにも抵抗を感じたに違いない。
 だが、やがて、マイクロトフとカミューがごく若い見習騎士だった頃からの友人だったことを思い出したようだった。大柄な赤騎士は遠慮がちに、
(「それでは、今度団長がお忍びで出かけたときはご報告いたします」)
 そう答えた。カミューが姿を消す時、必然的に副団長はより忙しくなる。かといって、誰彼構わずカミューの行く先を喋って歩いては、今度はカミューの安全が疑わしくなる。その役目を任せられる者は少ないのだった。そうして、苦労人の赤騎士と、生真面目な青騎士が二人で、カミューの午睡の番をすることになった。
 友人に対して抱くには、穏当でない感情をカミューに抱くマイクロトフにとっては、無防備に眠る友人を見守るのは、甘く苦しい時間だった。だが、自分の気持を見破られるのではないかと、鋭敏な友人の前で緊張して過ごす普段よりも、緑と風に囲まれたカミューを、沈黙の中で見おろす方が気楽と云えば気楽だった。
 城の外で眠るカミューは、目立たない色の上着を着て草の中に横たわり、あかるい髪だけが光を跳ね返して、土に埋もれた金の鍵のようだった。あの鍵で開いた扉の中には、どんなものが隠されているのか。閉じた睫毛を見下ろしながらそんなことを考える。
 だが、彼の扉を自ら押し開けようなどとは思いも寄らなかった。カミューは大抵笑っているが、その中に容赦ない炎が隠れていることを知っている。自分が火傷をするのは別段構わないが、あの美しくゆるやかな火の中に不純物を投げ込むのは避けたかった。
 だが、彼の髪に絡んだラジアータを見た時に、マイクロトフが感じたものは嫉妬のようなものではなかったかと思う。草の実でさえカミューの寝床に忍びこみ、絡みつくことが出来る。自分は彼と言葉を、視線を、剣を交わすが、そんな風に全身を絡ませて彼を困らせることは出来ない。
「……じっとしていろ」
 そう云ってゆるく身体を引き寄せると、カミューは黙って彼に身体を預けた。彼を抱き締めたのは初めてではない。友人としての挨拶の抱擁なら、何度も交わしたことがある。だが、特別な意味を持たないこの抱擁でさえ、今のマイクロトフにとっては、誘惑する智恵の木の幹を抱きしめているようだった。
 目前に近づくと、光を通したカミューの髪には虹色の光の珠がわだかまり、ローズグレイと栗色の筋がいりまじって見える。彼の髪は赤毛に近い色なのだ。
「なかなか取れないな」
 このまま折れるほど抱きしめたい。この衝動を耐えることに馴れたマイクロトフは諦めに似た感情の中で思う。我が物顔でカミューの髪ともつれ合うラジアータを取り除く。棘に傷つけられて髪が一本切れ、棘の中に薄赤い一筋を残していた。
 その誘惑に負けたのが何故なのか、彼には分からない。触れても分からないほどの力なら。草の葉が触れるよりも静かに、息を殺して、ただ掠るだけなら許されるのではないかと思った。もしも気づかれても、冗談だ、と云い逃れられるような小さな力なら。
 彼は背中をかがめ、たった今ラジアータの小さな実をつけていた、長く伸びたうなじに唇を近づけた。抱擁の経験はあっても、うなじで唇に触れたことはない。それは友人としては越権行為だった。
 髪の先がうなじにかかっている。圧力が肌にまでは及ばないよう、髪だけに触れるつもりで唇を近づけた。
 かさついて乾いた唇に触れた髪は想像した通り柔らかく、彼は、そんな形で自分の忍耐力を試したことを後悔した。吸い込まれるように友人の首筋に歯を立て、唇と舌で肌の感触を確かめる幻の触覚が押し寄せてくる。彼は身体を硬直させた。カミューの身体を自分から離すのは、かつて記憶にないほどの自制心を発揮しなければならなかった。
 身体が離れると、カミューが奇妙な表情で自分を見ているのが分かった。気づかれたのだろうか。いったい自分がどんな顔をしているのか想像がつかなかった。
「取れたぞ」
 そう云って、他愛ない罪をおかした草の実を差し出すのが精一杯だった。
 彼は、カミューから目を逸らした。自分は彼への想いと戦うことにすっかり馴れ、それはてのひらに馴染んだ剣のように、意のままになるものだと思っていた。或いは手綱を取れば自分の行きたい場所に自由に行ける馬のように。
 だが、それがいつでも自分のてのひらを飛び出し、カミューの許に走り寄ろうとする強い力を秘めていることに彼は初めて気づいた。これを自由に操れると自惚れてはならないことを痛感する。カミューの誘引力が、いつでも自分の自制を越えることを自覚するべきだった。
「もうそろそろ帰った方がいいと思うが?」
 声をかけると、カミューは何も感じていないような平静な顔で立ちあがり、服をはらった。マイクロトフの様子に気づいているのか、気づいていないのか、彼の表情だけでは分からない。カミューは自分の気分を隠すのに長けた男だ。一部の白騎士達に対して、若々しく慇懃な赤騎士団長がどれだけの毒を含んでいるか、気づいている者は殆どいないだろう。それはマイクロトフが友人という立場を保っていればこそカミューの口から漏らされた、ささやかな、しかし危険な打明け話だった。
 そこから城までを歩く時間、彼等は殆ど言葉を交わさなかった。城の裏門から中に入る。門番は、騎士服を身につけたマイクロトフと、領民と同じような私服を身につけたカミューを見て奇妙な顔になったが、何も云わなかった。
「あんな風に様子を見に来ることはないんだぞ?」
 中庭を横切りながら、カミューが云う。城の中庭に植わった葡萄の樹が、白い石の床に濃い影を落としている。正午を幾分過ぎた頃だ。こんな時間に眠くなるカミューの体内時計はつくづく不便だとしか云いようがない。
「分かっている」
 自分の部屋にでも帰って休めばいいだろう、と思うが、外で眠ることがおそらくカミューの気晴らしの一つなのだろうと、マイクロトフは察しをつけている。不器用な青騎士団長と、最高位の白騎士の間を取り持つために、最近のカミューは以前に増して複雑な立場になっている。自由に振舞っているようでいて、彼も気詰まりを覚えることもあるだろう。
 石の柱の影に入り、それぞれに分かたれた執務室に向かう通路にさしかかった時、ふとカミューは足を止めた。
「マイクロトフ」
 手招かれる。何を考えているのか分かりにくい、平穏な表情だった。近づいていくと、不意にその腕が伸びた。華麗に剣を使いこなし、騎士達を鼓舞し、女性を軽やかに踊らせるカミューの腕は、マイクロトフの硬い背中に巻き付いて、ほんの一瞬引き寄せるようにした。そうして、子供をあやすように軽く背筋を叩かれる。
「……カミュー?」
 自分の声が上擦ったのを自覚した。狼狽が胸の中に浸透してくるよりも一瞬早く腕は離れ、愛想のいい微笑を浮かべたカミューはするりと離れて行った。
「────どうした?」
 声の具合が元に戻らない。カミューは微笑を浮かべたまま首を振った。
「初志貫徹したまでだ」
「何だって?」
「こちらの話だ。着替えてくる。日よけになってくれてありがとう」
 そう云って、彼はどこか満足そうにきびすを返して歩み去っていった。一度も振り返る様子はない。マイクロトフは毒気を抜かれたようにその真っ直ぐに伸びた背中を見守った。初志貫徹というのが何の話なのか、彼にはまるで分からなかった。
 少し遅れて、平服に包まれた腕の感触が背中に甦ってくる。途方にくれた青騎士は、中庭の葡萄の花房が緑色に輝いているのを見遣る。
 そのしなやかで強引な感触は、なかなか彼の背筋から消えていきそうになかった。

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